1991年、東京都に生まれる。彼の作品には数えきれない程の折り鶴が使われています。わずか1cm四方の小さな色紙を手作業で折っていきます。日本人にとっては色紙を使って動植物などを折ることは、子供の頃から慣れ親しんだ遊びの一つです。しかしその中でも折り鶴というのは特別なものです。ただ形を作って遊ぶだけではなく、そこに作り手の想いが込められます。誰かの健康や安全、そして平和な世界を願うのです。小野川直樹は、2011年、東日本大震災の翌年に訪れた岩手県陸前高田の無残な景色を見て、自然が持つ力の恐ろしさとその中で輝く生命の力強さを目の当たりにしたのをきっかけに、折り鶴をモチーフとした作品制作に取り組み始めます。彼の作品のキーワードは「祈り」です。気の遠くなるような数の小さな折り鶴を折る作業は、まさに祈りそのものなのでしょう。また現代アートとしての視覚的な美しさも彼の作品の大きな特徴です。小さな折り鶴が葉っぱとなり幻想的な木が表現されています。樹形と折り鶴のバランス、配色など彼の持つ感覚は独創的で、さらに木でありながら、それとは違う何かがあるようです。自然界にあるすべてが彼のモチーフとなり得ます。いつも静寂があり「祈り」という彼の神聖な行為がまさに体現されています。2024年、折り鶴を平和の象徴としている日本被団協がノーベル平和賞を受賞したことで、世界的にも折り鶴への関心は高まっています。
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