
■日時
2025年4月4日(金)~4月28日(月)
10:00~20:00 (最終日のみ18:00まで)
■会場
京都 蔦屋書店 5F エキシビションスペース
■主催
京都蔦屋書店
■協力
YUMEKOUBOU GALLERY
色彩の海に潜りたい。
僕は色の美しい振る舞いを、絵画の中で探求している。
2016年頃から、注ぎ口のついた容器でアクリル絵具を流し描く手法で絵画を制作している。傾け固定したキャンバスに、トロトロに溶いた絵具をゆっくりと注ぎこむ、色材は画面を滑るようにゆっくりと流れ、時にはあっという間に枠の外へと落ちる。物質の痕跡は時間をかけて少しずつ定着する。キャンバスを回転させることで生まれる多重力とレイヤー構造は、物理法則から抽出、解放された色彩空間を描き出す。
タイトルの《DIVING》は、僕自身が画面に飛び込み、潜るような感覚で絵を描いていること、色彩の海でダイビングするように絵を体験して欲しいという思いから名付けた。また壁画ではなく独立した大画面に描くことは、絵を描いている人間としての本能的な憧れであると共に、様々な能力が試される場であるので恐怖も同居する。
僕が本格的に絵を描き始めた頃に出会った絵画史を切り拓いた抽象表現の巨匠達は、往時からこの世には居ない。また彼らが生きていた時代から比べたら視覚メディアの多様化は甚だしく、五感に訴え没入感を味わえるモノが身近にある環境で生活している。そのような中で絵を描く理由、とりわけ抽象的な作品を制作する理由はなんなのか、ずっと自問自答している。しかし自らの身体性を介したリアリティーは、技術がどう発展しようが大きくは変わらない、人は観て触れて感じる生き物なのだ。普遍的な「色」と「みる事」の美しさへの探究、大きな画面に絵具で描かれた絵画の存在理由は、色褪せないどころか、鑑賞者の体験を伴い自立することでより重要になっていくと信じている。筆を使わずに、絵具の物質性と重力が描き出した色彩の美しさを楽しんで頂ければ嬉しい。
さぁ、一緒に色彩の海へ。
美術家 / 中島 麦